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國さんコラム「自分らしく生きる」
国貞克則
国貞克則
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 2005/03/07
<第17話>「奇跡」
一週間程前から左眼が急に見えなくなった。すごく濃い霧の中にいるようで、 物の形がおぼろげにつかめる程にしか見えない。ブドウ膜炎という病気、原因 不明だ。

「片目が見えなくなったら黒い眼帯でもしよう。そうすれば講師業にも迫力が 増す」などと冗談を言っていたが、右目もかすんできた時には焦った。このま ま両目が見えなくなると仕事が出来なくなる。コンピューター画面を見ること も、こうして文字を書くことさえ難しくなる。自営業の私にとっては死活問題 だ。

僕達は自分の体が正常に動いていることを当然のことだと思っている。体が正 常に動いていることを前提に、やりたいことが見つからないと言って悩んだり、 想い通りに行かないことに腹を立てたり、めぐまれていない自分の才能に嘆い たり、いつも愚痴や不満を言いながら生きている。

しかし、考えてみれば、僕達がこうして生きて普通に生活していること自体が 奇跡である。心臓も肺も自分の意志で動かしているわけではない。繊細で膨大 な人間を構成する全ての器官が正常に動いているから僕らは生きていられるの だ。こう考えると、何か人知を超えた偉大な力に感謝せざるを得ない。この偉 大な力のことを科学の世界では Something Greatと呼ぶし、宗教の世界では神 や仏と呼んできたのだろう。

「このまま眼が見えなくなるのではないか」という恐怖の中で僕の心に生じた ことは、今生きているというこの奇跡に感謝し、自分の人生をもっと大切した いという思いだった。

だからと言って今すぐに自分の人生が180度変わるわけではない。しかし、 日々の生活の中でもっと自分の心に素直に耳を傾けようと思った。あるべき論 ではなく、自分が本当にワクワクすることは何か、自分を活かせる道はどこか、 もっと真剣に考えたいと思った。

ありがたいことに眼は少しずつよくなっている。
「ありがたい」とは「有難い」、めったにないほど尊いから「ありがたい」の だそうだ。まさに生きているそのこと自体がありがたいのだ。この生きている 奇跡の有難さに感謝して、大切に人生を使わせてもらおうと思う。
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