近所の年配のご夫妻とお付き合いをさせて頂いている。彼らと話しをするとい
つも楽しいし救われる気がする。先日も「國貞さん、自分のどこに才能があっ
て、何に向いているかなんて70歳を過ぎても分からないものよ」と言われ心
が楽になった。
人には色んな才能がある。現代は厳しい競争社会だから勝ち抜く人がもてはや
されたりするが、一昔前の農業社会ではもっと違ったタイプの人が尊重されて
いたのだろうと思う。昔の農村ではだれかと競争するより皆で協力することの
方がはるかに大事だったのだから。
今の時代は仕事をする上で多様な個性が許されなくなったようにも思えるが、
考えようによれば恵まれた時代だとも言える。いろんな種類の仕事があり、自
分の個性や能力に合わせて仕事を選ぶことができる。もし一昔前に農家で生ま
れていれば、否応なく農業をやるしかなかった。今我々は仕事を選ぶことがで
きるようになって仕事に対して自由になった。しかし、自由になってみればど
うやって仕事を選べばいいのか分からないという悩みが出てきた。考えてみれ
ば仕事選びは贅沢な悩みだ。
昔ある劇団の座長さんが「いつまでもヒーローやヒロインを目指し続ける俳優
は成功しない。端役であっても自分の役割を見つけた俳優は主役よりも存在感
のある演技をする」と言っておられたことが忘れられない。
尊敬するラーメンチェーン店の社長さんに、「どうしてラーメンをやることに
したんですか?」とたずねたら、「高校を卒業して2年ほどサラリーマンをし
てから独立したくなった。乾物屋をやろうと思い、先ずは会社を辞め乾物屋の
勉強をするために住み込みで働ける所をボストンバックを抱えて探し歩いた。
どこにも相手にしてもらえず所持金もなくなりかけた時、目の前にラーメン屋
の住み込みアルバイトのちらしが貼ってあった。そこに飛び込んだことがきっ
かけでラーメン屋になった」とおっしゃっていた。
自分の仕事が見つけるきっかけはそんなものだと思う。自分の能力や適性がど
こにあるのかも分からない。いつ自分の仕事に巡り合えるのかも分からない。
大人でもそんな悩みを抱えながら生きている人が多いと思う。だから、若い人
が仕事に対して悩みを抱えていても何の不思議もないのだ。
ただ、大切なことは、悩みの前で立ち尽くすのではなく、行動しなければ何も
開けてこないということ、ただそれだけだと思う。
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