生きる力のうちでも覚悟を決めた人の力ほど清々しいものはない。生きてゆくことは価値あることだと思うが、生きてゆくことは楽しい事ばかりではない。むしろ苦しい事のほうが多い。人間は苦しい状況に直面すると逃げ出そうする。苦しい状況でなくても、他にもっといい所があるのではないかと目をキョロキョロさせている人が多い。しかし、逃げ場がある人に本当にいい仕事ができるだろうか。
私は管理職研修で、今までどのように自分のモチベーションが変化してきたかを図にしてもらうことがよくある。最近ある宗教法人にお勤めの方のモチベーション曲線を見た。その方のモチベーション曲線は、その宗教法人に勤めだして3年目くらいから極端に高くなっていた。理由を伺うと、それまではこの宗教法人で仕事をしていていいのだろうかという迷いがあったが、3年目にこの宗教法人で生きていこうと覚悟を決められたのだそうだ。
中小企業の社長さん向けの経営研修で、「部下が退職したいと言い出した時」と題して、社長さん同士でロールプレイイングをして頂いたことがあった。その時、ある二代目社長さん(とはいってもお歳は70歳位だったが)が、部下役をなかなかやめようとしない。「もうその辺で結構です」と言って私が話し始めても、その社長さんの組だけがロールプレイイングを続けてしまう。
研修が終ってその社長さんが私の所に来られ、「今までたくさんの部下が会社を辞めていった。ロールプレイイングではありましたが、私は自分の人生の中で初めて『退職したい』と今日言ったんです。」と涙眼になりながら言われた。
私はこれを聞いて、この社長さんには今まで会社を辞めるなんて事は彼自身の選択肢にはなかった。厳しく苦しい覚悟のもとに経営してこられたんだなと胸が締め付けられる思いであった。同時に、辞められるという選択肢があるだけサラリーマンは気楽なのだと感じたものだった。
覚悟とは「迷いを脱し、真理を悟ること」とある。覚悟を決めた人に迷いはない。そして、本当に大切なことが分かっている。事業がうまくいかなくなっても、あれもこれも失いたくないと思っている社長は迷いだらけである。何もかも捨てる覚悟が出来ている人は「従業員だけは守ってもらいたい」と言われ、自分にとって一番大切なものが分かっておられる。
覚悟出来ない人はいつまでたっても迷いの中。覚悟を決めた人は幸せだ。
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