私は15年前に採用担当をやった頃から一貫して若い子達に言っていることがある。それは「3年くらいで会社を辞めるな。でも10年経ったら会社を辞められる人間になっておけ」という言葉だ。
最近「やりたいこと」という言葉がどうも気になる。やりたいことさえやれば幸せになれるのだろうか。私の経験からいって、やりたいことをやると幻滅することが多いような気がする。私は学生時代、海外に製鉄所や発電所などを作るプラント輸出という仕事を通して、発展途上国と日本が共にハッピーになる仕事がしたかった。幸運にもその「やりたい仕事」に就くことができたが、そこで味わったのは、発展途上国と日本の同時ハッピーばかりではなかった。
発展途上国はお金がない。プラント輸出もビジネスだから受注競争がある。受注するためにはコストを抑えなければならない。結果として、一日中人間が手押しで潤滑油を補給する機械を納めなければならない時があった。プロジェクトマネジャーに「この機械は非人道的だ」と訴えたら、「顧客は納得している。彼らには金がない。我々も赤字はだせない。どうしても自動給脂装置を納入したいのならお前がポケットマネーで買ってあげたらどうだ」と言われた。その装置はとてもポケットマネーで買えるようなものではなかった。ビジネスは理想論だけでは片付かないのだ。
会社を辞めて事業に失敗し、今は経営コンサルと研修講師という仕事をしている。会社を辞めた時、経営コンサルや研修講師のような仕事だけはやりたくないと思っていた。しかし、生きてゆけなくなり、あるご縁もあって「やりたくないこと」を仕事にした。
「やりたくないこと」だったから普通にやってはいられない。やるからには自分で意義ある仕事にしなければならない。明確な成果を出し、特別高い評価を受けなければ、自分の存在意義がなくなる。
そんな思いで「やりたくないこと」をやると、勉強することが一杯あることに気づく。人の真似事ごとではなく、仕事に突っ込んでゆき、本質にせまり、お客様に喜んでもらわなければならない。そうやって仕事をしていると「やはり仕事はどれも同じだな」と思うようになってくる。「やりたくないこと」の中にも面白いこともたくさん出てくる。
仕事をする上で所詮20代は修行の時代でしかない。あまり「やりたいこと」を考えるより、仕事の中に面白いことを発見する術を学んだ方がいいと思う。
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