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國さんコラム「生きる力」
国貞克則
国貞克則
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 2006/06/12
<第30話>「自分の事は横に置いて」
先日、会計研修の時、遅れてきた受講生が休み時間に、遅れて来て聞き逃したことを質問にきた。その人の後ろにも質問者が待っているのにそんな事はお構いなし。その後も自分の会社の税金を減らす方法ばかり質問する。この姿を見て「この人は一事が万事、自分中心なんだろう。これでは幸せになれないだろうな」と思った。

いつも人間は自分中心だ。人間は自分の思い通りに出来ている時に幸せを感じる。この自分を大切にする気持ちを否定するつもりはない。これこそが人間のエネルギーの源泉かもしれない。しかし、いつまでも自分の事に執着している人は幸せにはなれないと思う。

今「自分はこんな仕事は好きになれない」とか「こんな仕事をしていて意味があるのだろうか」とか「この仕事は自分には合っていない」とかと思っている人が多いのではないだろうか。しかし、このように自分を中心に仕事を見ているとなかなか幸せにはなれないような気がする。

そういう私自身、今やっている研修講師という仕事は自分には合っていないと思っている。そもそも技術屋で人の前で話しをするのは得意ではない。一人で本を読んだり物作りをしていた方が好きなタイプの人間だ。だから、研修の仕事がある朝はいつも気分が優れない。研修がうまくいかないわけではない。いつも好評を頂いている。でも、自分に合っていないと思っているから気分が優れないのだ。

朝起きてから電車で研修会場に向かう間も、研修の事を考えている。その中で次第に「自分が研修講師に向いているかどうかなんて関係ない。主役は受講生であり、受講生の皆さんに何か役に立ち、受講生の皆さんが明日から仕事を行う上で何かヒントを見つけて下さればそれでいいのだ」という気持ちに変ってくる。そして、心の中から「自分」という感情がなくなった時、心が自由になり、何のわだかまりもなく気持ちよく研修に向かうことができるようになる。

事業で成功している社長さんを見ても、最初は成功しようとして事業を始められたのだろうが、どこかで自我や自分の欲を捨てておられるのが分かる。逆にそうでなければ大きな成功はないような気がする。

松下幸之助と言えば、我々から見れば思い通りの人生を送った人のように思える。しかし、彼は晩年こう語っている。「これまでの自分の人生はね、自分の人生であって全然自分の人生ではなかった。なにひとつ、自分のしたいことができなかったですよ」。
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